諸々の定理の証明

先に進むために、以下の定理の証明を確認しておきます。簡単のため、それぞれ2次の正方行列に限定していますが、おそらく3次以上の場合でも成立するはずです。

正則行列の列ベクトル は互いに一次独立である

ある正則行列をPとし、その列ベクトルをそれぞれ\vec{p_1}=(p_{11}, p_{21}), \vec{p_2}=(p_{12}, p_{22})とします。
P = (\vec{p_1}, \vec{p_2})
\vec{p_1}\vec{p_1}は互いに一次独立ではない、すなわち一次従属であると仮定すると、\vec{p_2}\vec{p_1}スカラー倍で表せますので
P = (\vec{p_1}, k\vec{p_1})
となります(kは任意の実数)。ところが、Pの行列式を求めると
P = \left(\begin{array}{ccc} p_{11} & kp_{11} \\ p_{21} & kp_{21}\end{array}\right)
|P| = p_{11}kp_{21} - kp_{11}p_{21} = 0
となり、これはPが正則行列である(|P|\neq0)という前提と矛盾します。
よって、正則行列の列ベクトル は互いに一次独立であることが分かりました。

相異なる固有値に属する固有ベクトルは互いに一次独立である

\lambda_1\lambda_2を線形変換Fの固有値とし(\lambda_1\neq\lambda_2)、それぞれの固有値に属する固有ベクトル\vec{x_1}\vec{x_2}とします。\vec{x_1}\vec{x_2}が互いに一次独立である、すなわち
k_{1}\vec{x_1} + k_{2}\vec{x_2} = \vec{0}
と仮定した時(以下、式1)、式1にFを適用すると、
f(k_1\vec{x_1} + k_2\vec{x_2}) = k_1f(\vec{x_1}) + k_2f(\vec{x_2}) = k_1\lambda_1\vec{x_1} + k_2\lambda_2\vec{x_2}
が得られます(以下、式2)。そこで、式1と式2から\lambda_2を消去すると、
k_1(\lambda_1 - \lambda_2)\vec{x_1} = \vec{0}
となりますが、この時、\lambda_1\neq\lambda_2\vec{x_1}\neq\vec{0}ですので、k_1 = 0です。また同様に、\vec{x_2}\neq\vec{0}ですので、k_2 = 0です。
よって、k_1 = 0かつk_2 = 0の場合に限り、
k_{1}\vec{x_1} + k_{2}\vec{x_2} = \vec{0}
が成立し、相異なる固有値に属する固有ベクトルは互いに一次独立であることが分かりました。