基底の変換と相似
線形写像という概念は抽象度が高く単純そうに見えて意外と難しいです。特に基底の変換から相似にかけて理解があやふやだったため少々躓きました。以下、個人的なまとめです。
基底の変換
いつものように定義だけだと分かった気がしないので、次の線形変換Fを例に具体的に考えてみます。
Fは任意のベクトルを原点を中心にθだけ回転させる上の変換ですが、まずはこのFについて、標準基底
に関する表現行列(以下、)を求めてみます。
基底E上の任意のベクトルを
とした場合、
なので、
となります。では、基底を標準基底から
に変換した場合、Fの表現行列(以下、)はどのように変更されるでしょうか。
上と同様に、基底A上の任意のベクトルを
とした場合、
となります。そこで、
とおいて、ベクトルの係数p, q, r, sをそれぞれ求めると、
となります。結果として、はに比べて少し分かりにくくなってしまいました。
相似
基底を変換することによって、2つの表現行列とが得られました。一般に異なる基底に関する表現行列の間には以下の関係式が成立します。すなわち、線形変換Fについて、基底に関するFの表現行列をA、基底に関するFの表現行列をB、VからUへの変換行列をP(正則行列)とすると、
が成立します。この時、AとBは互いに相似であるといいます。
では、実際にこの関係式を使って表現行列をからに変更してみます。基底Eから基底Aへの変換行列Pは、
ですので、
となり、期待通りが得られました。また、関係式を変形して
が成り立つ事から、反対にからに変更することもできます。
まとめ
上の例において、との間で相互に表現行列を変更できたように、一見複雑な線形変換でも基底を置き換えれば、単純な形になる場合があります。つまり、基底の変換というのは、線形変換の理解するあたって見通しの良いように視点を変えるという意味なんですね。