行列の対角化

ようやく最低限の準備が整った感があるので、今回は行列の対角化について。以前に少しだけ触れたのですが、行列の対角化とは、これまで学んだ内容をまとめると、だいたい次のような操作であると分かります。すなわち、ある行列Aと対角行列Bが相似である場合、B = P^{-1}APを満たす正則行列Pを適当に選んでAをBにすることを対角化といいます。ただし、与えられた行列が必ずしも対角化可能とは限らないので、対角化の条件を念のため確認しておきます。
まず、行列Aを2次正方行列として、適当に正則行列Pを選んでP = (\vec{p_1}, \vec{p_2})としましょう。そこで、Aが対角化可能であると仮定すると
P^{-1}AP = \lambda E
AP = \lambda P
A(\vec{p_1}, \vec{p_2}) = \lambda (\vec{p_1}, \vec{p_2})
となりますが、この時、Pは正則行列であることから、\vec{p_1}\vec{p_2}は互いに一次独立なので
A\vec{p_1} = \lambda\vec{p_1}
A\vec{p_2} = \lambda\vec{p_2}
となり、\vec{p_1}\vec{p_2}はそれぞれ固有値\lambda_1\lambda_2に属する固有ベクトルと等しいことになります。したがって、行列Aを対角化するには、Aが互いに一次独立な固有ベクトルをもつ必要があり、Aの固有ベクトルを列ベクトルとすれば自ずと正則行列Pが得られることが分かります。

行列の対角化の主旨について誤解を恐れずに言うと、全ての線形変換は、任意のベクトルを固有ベクトルの方向に固有値を倍率として伸縮させる変換なので、(可能ならば)表現行列として扱いやすい対角行列にできたら便利、ということでしょうか。大学の講義で習ったときは、講師の方の説明を聞いてもさっぱり意味が分からなかったのですが、こうやって自分でワンステップずつ積み重ねて考えてみると、なんとなく理解できた気がします。
以上で、線形代数の肝と言われる固有値固有ベクトルから行列の対角化まで一通りあたってみました。今後は、もう少し踏み込んで他の話題(ジョルダン標準形とか)に当たってみると同時に、どのような分野で応用可能なのか探ってみたいと思います。